2009年 11月 11日
怖い話(其の四)プラ・ダラム・プリのチャロナラン |
これまた随分昔の話になるが。
1994年の結成以来、来日公演こそ行ったものの、地元バリではチャーター公演や小規模な儀式を中心とした地道な活動を続けていたヤマサリだが、1997年3月某日、結成以来の大舞台に立つことになった。
その大舞台とは…
プラ・ダラム・プリ・プリアタンのチャロナラン。
以前も触れたが、このプラ・ダラム・プリ・プリアタンのチャロナランは、過去に連続して起きた不幸な事故をお払いするための浄化儀礼が恒例化した特殊なもので、地元の人たち、観光客を問わず、毎回多くの見物人で賑わう。つまり、プラ・ダラム・プリでチャロナランを上演するということは世間に広く楽団の存在を知らしめることとなる。
このため、新しい楽団はこの奉納儀礼に出演することを切望するが、このイベント的な儀礼に参加すれば注目の的となる為、絶対に失敗は許されない。
なぜならば、新しい楽団が出演する、という情報が流れると、ウブド界隈の芸能関係者は楽団の『品定め』をするために、申し合わせたように勢ぞろいするからだ。つまり、楽団にとっては試金石的な意味合いをも含んでいるのだ。ここで『ヘタをうつ』と、「なんだ、あんな程度か」と、楽団の評価が決まってしまうのである。
こえ~
この大難題をおおせつかったヤマサリは、1ヶ月以上に渡り連日長時間のリハーサルを行った。劇の冒頭に演奏するためのブバロンガンの器楽曲も新たに作曲、制服もこの日の為に新調。主要な踊り手は親交のあるバトゥアンの高名な舞踊一家、ジマット家に依頼、万全の布陣で本番に臨んだ。
当日、会場はおびただしい数の観客で埋め尽くされた。いや、正確に言えば溢れかえった。演奏者のためのスペースにまで観客が入り込んでいる。演奏の邪魔にならない程度に場所を空けてもらい、メンバーは所定の位置についた。
「いいか、何があっても堂々としていろ」と、チョ・アリ氏に念を押され、上演開始。内容は演奏事故もなくほぼ完璧。ヤマサリは無事に大役を果たし、広く一般のバリ人の知るところとなった。
(注:写真と本文は直接の関係はありません)
その数日後、用事があってチョ・アリ氏宅を訪れた。
「先日はどうも」
「ああ、上手く行ったな。あれからオダランの出演依頼がひっきりなしだ」
「それはよかった。それにしても凄い人でしたね」
「ああ」
「俺のすぐ横にまで観客が入り込んでいて、弓を動かすのが大変でしたよ」
「あ、お前の横で観てた奴、覚えているか?」
「ええ、なんとなく。すごく視線が気になったんで…」
「彼はな、○○○(有名楽団)のルバブ奏者だ」
「え…」
「彼だけじゃないぞ。お前のすぐ後ろで×××のルバブ奏者が指使いを観察してた」
「は?」
「他にも何人か…とにかく、お前の周囲はルバブ奏者だらけだった」
「うそ…」
「気がつかなかったのか?」
「全然…だってルバブ奏者って言ったら、スガタ先生とバグースさんくらいしか知りませんもん…」(注:1997年当時の話である)
「ああ、そうか…」
「…なんでまた…」
「そりゃあ、お前の腕前がどれだけのもんか『品定め』をしてたに決まってるだろう」
「げ…」
こ、こ、こえ~…マジで、こえ~
1994年の結成以来、来日公演こそ行ったものの、地元バリではチャーター公演や小規模な儀式を中心とした地道な活動を続けていたヤマサリだが、1997年3月某日、結成以来の大舞台に立つことになった。
その大舞台とは…
プラ・ダラム・プリ・プリアタンのチャロナラン。
以前も触れたが、このプラ・ダラム・プリ・プリアタンのチャロナランは、過去に連続して起きた不幸な事故をお払いするための浄化儀礼が恒例化した特殊なもので、地元の人たち、観光客を問わず、毎回多くの見物人で賑わう。つまり、プラ・ダラム・プリでチャロナランを上演するということは世間に広く楽団の存在を知らしめることとなる。
このため、新しい楽団はこの奉納儀礼に出演することを切望するが、このイベント的な儀礼に参加すれば注目の的となる為、絶対に失敗は許されない。
なぜならば、新しい楽団が出演する、という情報が流れると、ウブド界隈の芸能関係者は楽団の『品定め』をするために、申し合わせたように勢ぞろいするからだ。つまり、楽団にとっては試金石的な意味合いをも含んでいるのだ。ここで『ヘタをうつ』と、「なんだ、あんな程度か」と、楽団の評価が決まってしまうのである。
こえ~
この大難題をおおせつかったヤマサリは、1ヶ月以上に渡り連日長時間のリハーサルを行った。劇の冒頭に演奏するためのブバロンガンの器楽曲も新たに作曲、制服もこの日の為に新調。主要な踊り手は親交のあるバトゥアンの高名な舞踊一家、ジマット家に依頼、万全の布陣で本番に臨んだ。
当日、会場はおびただしい数の観客で埋め尽くされた。いや、正確に言えば溢れかえった。演奏者のためのスペースにまで観客が入り込んでいる。演奏の邪魔にならない程度に場所を空けてもらい、メンバーは所定の位置についた。
「いいか、何があっても堂々としていろ」と、チョ・アリ氏に念を押され、上演開始。内容は演奏事故もなくほぼ完璧。ヤマサリは無事に大役を果たし、広く一般のバリ人の知るところとなった。
その数日後、用事があってチョ・アリ氏宅を訪れた。
「先日はどうも」
「ああ、上手く行ったな。あれからオダランの出演依頼がひっきりなしだ」
「それはよかった。それにしても凄い人でしたね」
「ああ」
「俺のすぐ横にまで観客が入り込んでいて、弓を動かすのが大変でしたよ」
「あ、お前の横で観てた奴、覚えているか?」
「ええ、なんとなく。すごく視線が気になったんで…」
「彼はな、○○○(有名楽団)のルバブ奏者だ」
「え…」
「彼だけじゃないぞ。お前のすぐ後ろで×××のルバブ奏者が指使いを観察してた」
「は?」
「他にも何人か…とにかく、お前の周囲はルバブ奏者だらけだった」
「うそ…」
「気がつかなかったのか?」
「全然…だってルバブ奏者って言ったら、スガタ先生とバグースさんくらいしか知りませんもん…」(注:1997年当時の話である)
「ああ、そうか…」
「…なんでまた…」
「そりゃあ、お前の腕前がどれだけのもんか『品定め』をしてたに決まってるだろう」
「げ…」
こ、こ、こえ~…マジで、こえ~
by rosinambu
| 2009-11-11 15:55
| バリ
|
Comments(2)