2007年 12月 26日
ガベンも進化した・・・ |
ガベン。バリで行われる公開火葬である。その葬列の華やかさ、そして衆人環視の中で遺体を焼くというワイルドさ(?)から、文化的観光資源の一つにもなっている。
通常のガベンは合同火葬として行われることが多い。なぜならガベンには莫大な費用がかかるためである。あまり裕福ではない一般家庭では、家族が亡くなってすぐにその資金を捻出することは難しい。そこで一旦遺体は埋葬し、充分資金が貯まった後、合同火葬の時機を見て遺骨を掘り起こし、荼毘に付する場合が多い。合同火葬だと一体あたりの金銭的負担を安く済ませることが出来るからだ。ただ、あまり長期間埋葬したままにすると、掘り起こしても一部しか骨がみつからなかったり、埋葬した場所が曖昧になってしまい、遺骨自体がみつからないこともあるようだ。そういう場合は掘り返した場所の土を遺体の代わりにする場合もある、と聞く。
ところが、王家の人間が亡くなった場合はそういうわけに行かないようである。遺体を埋葬することは許されず、亡骸は邸内のしかるべきところに安置され、出来るだけ早いガベンに適した日に盛大に儀式を執り行うのが通例である。
ガベンの葬列では、バデと呼ばれる遺体を火葬場まで運ぶ塔のような棺、そして火葬場で遺体を荼毘に付する時に使うルンブーと呼ばれる動物の形を模した棺が目を引く。これらは頑丈な竹で組んだ台に載せられ、大人数で担がれて火葬場まで向かう。日本人的常識では、葬式はしめやかに執り行われると思いがちだが、このパレードはまるで神輿を担いでいるかのように実に賑々しく行われる。屈強な男衆に担がれたルンブー、バデが掛け声と共に火葬場に向けて勢いよく出発する様は壮観である。
ちょっと困るのは、ガベンが行われる場合、昼前から夕方にかけてその地域が停電することである。なぜなら、天高くそびえ立つ王家の立派なバデは送電線より高さがあるため、パレードの邪魔になる送電線は遠慮なく切断されてしまうからである。勿論、電力会社には電線を切断するという通達をし、許可を得た上のことであり、直前から電力供給は止められている。
で、先日、ウブドの王家のガベンが盛大に執り行われた。ちょうど夕方まで暇だったので観にいってみることにした。
葬列が始まるウブド王宮の前に昼頃到着すると、まさにルンブーが出発するところだった。村人、観光客でごった返している中、「祭だ祭だわっしょいわっしょい」とばかりにバラガンジュール(移動用のガムラン)に促され、勢い良く出発。
続いて遺体を載せたバデもよりいっそう賑々しく出発。
と、さっそく難関に差し掛かった。バデの行き先を電線が邪魔している。
「ああ、これは電線チョッキンだな」
誰しもがそう思った。
その直後・・・
カックン
バデが先端から1メートル位のところで突然折れ曲がり、電線の下をくぐったのである
なんだ?いったい何が起こったんだ?あたりはどよめきに包まれた。
「あ、バデが壊れた。これは大変だ。王家の葬式に不具合があったなんてことは許されない。特に権威の象徴であるバデの層の数が減ったなんてことは由々しき事態だ。これは日を改めて仕切り直しか?」
と思った次の瞬間。
シャキーン
あっ・・・元通り・・・
よくよく見てみれば、内部にはぶっといスプリング、そしてバデの先端にはロープが取り付けられている。多分、折れ曲がる部分は蝶番で止めてあり、ロープを引っ張るとカックン、離すとスプリングの張力でシャキーンと元通りになる仕掛けらしい・・・
び、びみょ~・・・
電線に引っかかりそうになるとカックン
通り過ぎるとシャキーン
この動作を何度となく繰り返しバデは堂々と火葬場に到着・・・
う~ん・・・なんと言ったらいいのか・・・そこはかとなく感じるやるせなさ・・・
どうやら、伝統行事であるガベンも文明と歩み寄る方向で妥協することになったらしい・・・
バリ人の創意工夫は既存の常識にとらわれることを潔しとせず、日々進化しているのである・・・
通常のガベンは合同火葬として行われることが多い。なぜならガベンには莫大な費用がかかるためである。あまり裕福ではない一般家庭では、家族が亡くなってすぐにその資金を捻出することは難しい。そこで一旦遺体は埋葬し、充分資金が貯まった後、合同火葬の時機を見て遺骨を掘り起こし、荼毘に付する場合が多い。合同火葬だと一体あたりの金銭的負担を安く済ませることが出来るからだ。ただ、あまり長期間埋葬したままにすると、掘り起こしても一部しか骨がみつからなかったり、埋葬した場所が曖昧になってしまい、遺骨自体がみつからないこともあるようだ。そういう場合は掘り返した場所の土を遺体の代わりにする場合もある、と聞く。
ところが、王家の人間が亡くなった場合はそういうわけに行かないようである。遺体を埋葬することは許されず、亡骸は邸内のしかるべきところに安置され、出来るだけ早いガベンに適した日に盛大に儀式を執り行うのが通例である。
ガベンの葬列では、バデと呼ばれる遺体を火葬場まで運ぶ塔のような棺、そして火葬場で遺体を荼毘に付する時に使うルンブーと呼ばれる動物の形を模した棺が目を引く。これらは頑丈な竹で組んだ台に載せられ、大人数で担がれて火葬場まで向かう。日本人的常識では、葬式はしめやかに執り行われると思いがちだが、このパレードはまるで神輿を担いでいるかのように実に賑々しく行われる。屈強な男衆に担がれたルンブー、バデが掛け声と共に火葬場に向けて勢いよく出発する様は壮観である。
ちょっと困るのは、ガベンが行われる場合、昼前から夕方にかけてその地域が停電することである。なぜなら、天高くそびえ立つ王家の立派なバデは送電線より高さがあるため、パレードの邪魔になる送電線は遠慮なく切断されてしまうからである。勿論、電力会社には電線を切断するという通達をし、許可を得た上のことであり、直前から電力供給は止められている。
で、先日、ウブドの王家のガベンが盛大に執り行われた。ちょうど夕方まで暇だったので観にいってみることにした。
葬列が始まるウブド王宮の前に昼頃到着すると、まさにルンブーが出発するところだった。村人、観光客でごった返している中、「祭だ祭だわっしょいわっしょい」とばかりにバラガンジュール(移動用のガムラン)に促され、勢い良く出発。
続いて遺体を載せたバデもよりいっそう賑々しく出発。
と、さっそく難関に差し掛かった。バデの行き先を電線が邪魔している。
「ああ、これは電線チョッキンだな」
誰しもがそう思った。
その直後・・・
カックン
バデが先端から1メートル位のところで突然折れ曲がり、電線の下をくぐったのである
なんだ?いったい何が起こったんだ?あたりはどよめきに包まれた。
「あ、バデが壊れた。これは大変だ。王家の葬式に不具合があったなんてことは許されない。特に権威の象徴であるバデの層の数が減ったなんてことは由々しき事態だ。これは日を改めて仕切り直しか?」
と思った次の瞬間。
シャキーン
あっ・・・元通り・・・
よくよく見てみれば、内部にはぶっといスプリング、そしてバデの先端にはロープが取り付けられている。多分、折れ曲がる部分は蝶番で止めてあり、ロープを引っ張るとカックン、離すとスプリングの張力でシャキーンと元通りになる仕掛けらしい・・・
び、びみょ~・・・
電線に引っかかりそうになるとカックン
通り過ぎるとシャキーン
この動作を何度となく繰り返しバデは堂々と火葬場に到着・・・
う~ん・・・なんと言ったらいいのか・・・そこはかとなく感じるやるせなさ・・・
どうやら、伝統行事であるガベンも文明と歩み寄る方向で妥協することになったらしい・・・
バリ人の創意工夫は既存の常識にとらわれることを潔しとせず、日々進化しているのである・・・
by rosinambu
| 2007-12-26 15:37
| バリ
|
Comments(6)
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tidakapa-apa at 2007-12-26 22:19
カックン~シャキーン・・・面白い★
そのうちオゴオゴにもこのバージョンも出てくるかも・・・
やっぱTの字棒で押し上げなくっちゃねぇ~
そのうちオゴオゴにもこのバージョンも出てくるかも・・・
やっぱTの字棒で押し上げなくっちゃねぇ~
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titiang2 at 2007-12-27 23:25
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みかわや
at 2007-12-28 00:14
x
ガベンは以前見にいったことがありますが賑やかでしたね。
このレポートとってもおもしろかったです(笑)
このレポートとってもおもしろかったです(笑)
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rosinambu at 2007-12-28 10:18
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rosinambu at 2007-12-28 10:20
titiang2さん、こんにちは。
そう。ちょっと前までは電線チョッキンだったんです。
盛大なガベンがある日は、レストランに入っても冷たいビールが飲めなかったのが悩みでした。(冷蔵庫が止まってしまうので・・・)
そう。ちょっと前までは電線チョッキンだったんです。
盛大なガベンがある日は、レストランに入っても冷たいビールが飲めなかったのが悩みでした。(冷蔵庫が止まってしまうので・・・)
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rosinambu at 2007-12-28 10:25
みかわやさん、こんにちは。
実は、ガベンの葬列を見物に行ったのは久しぶりだったので、いつから「カックン」「シャキーン」方式を取り入れたのかは知らないんです。もしかしたら結構前からやっていたのかも・・・
いずれにせよ、私はこんなの初めて見ましたし、あまりにも予想外だったので、本当は王宮の前でバデが出発するのを見届けるだけのつもりだったのですが、フラフラと火葬場までついていってしまいました。気がつけばパレードの後ろについていく観光客たちの最前列にいました・・・ ^^;
実は、ガベンの葬列を見物に行ったのは久しぶりだったので、いつから「カックン」「シャキーン」方式を取り入れたのかは知らないんです。もしかしたら結構前からやっていたのかも・・・
いずれにせよ、私はこんなの初めて見ましたし、あまりにも予想外だったので、本当は王宮の前でバデが出発するのを見届けるだけのつもりだったのですが、フラフラと火葬場までついていってしまいました。気がつけばパレードの後ろについていく観光客たちの最前列にいました・・・ ^^;