2006年 05月 18日
サテ・カンビン雑感 |
バリに行くと、どんなに短期の滞在でも意識して食するようにしている食べ物がある。
それは、パダン料理、バビ・グリン、そして、サテ・カンビン!
サテ・カンビンは、山羊のサテ(串焼き)であり、少なくともバリでは専門の店で食べるのが普通。と、言うより、専門の店以外では提供されてるのを見たためしがない。
サテ・カンビンは一般には「精力がつく食べ物」とされている。また、ビールとの「食べ合わせ」が悪いとも言われており、「サテ・カンビンを食べてビールを飲むと精力がつきすぎて眠れなくなる」などとも言われているようだ。たしかにアルコール類を置いてあるサテ・カンビン屋には出くわしたことはないが、そもそもサテ・カンビンはムスリムの食べものであるので、これは当然だし、ブンクス(持ち帰り)したサテ・カンビンをビールを飲みながら食したことも何度となくあるが、少なくとも俺は体調に異変を感じたことは一度もない。
それはさておき、サテ・カンビン屋に行くと、黙っていてもナシ・プティ(ご飯)、グレ・カンビン(山羊の様々な部位が入ったスープ)、そして勿論サテ・カンビン(山羊肉の串焼き)が出てくる。なぜなら、これしか供するものがないからだ。この為、サテ・カンビン屋での従業員との会話は極端に少ない。せいぜい、「アパ・ミヌム?(何を飲む?)」と訊かれる程度だ。俺の場合、サテ・カンビン屋に行くとどんなに多くとも4回しか話さない。内訳は、
「テ・ボトル(瓶詰めゲロ甘紅茶)くれ」
「扇風機回してくれ。暑くていけねぇ」
「バワン・メラ(赤玉葱。ま、薬味である)をたっぷり入れてくれ」
「はいよ、これでお勘定」
これだけである。
さて、入店後、しばし待つことうやうやしく運ばれてきたサテ・カンビン。こいつを食するにはちょっとした流儀がある。「なぁに、俺達は焼き鳥を食いなれているからな」などと侮ってはいけない。たしかに、我々日本人にとって焼き鳥は馴染み深い串焼き料理ではあるが、サテ・カンビンは常識的に日本で供されている焼き鳥と比較し、肉の一片があまりにも小さいのだ。それこそ小指の先くらいしかないのが普通であり、初めてサテ・カンビンを食する日本人は例外なく困惑する。やはりここは串を横に構え、根元の肉片から串に刺さった複数の肉片を一気にむしりとり一口で食するのが王道であり、一番美味しい食し方である。
この食べ方が一番美味しいという理由には「肉の一片が小さいから食べ応えがないし」とか、「やっぱ精力のつく料理はワイルドにいかなきゃな」等と言うような単純な、もしくは妙な思いいれでは片付けることの出来ない確固たる根拠がある。実は、串に行列をなした肉の最後尾、即ち串の根元に最も近い部分に腎臓や肝臓類の臓物類、即ち筋肉とは異なるゲテモノ素材が待ち受けていることも多いのだ。正直言って、これらのモツは単独で食べると臭い。このため、旨み成分の多い筋肉類と同時に食することが望まれるのである。お上品に少しづつ食べていると、「もぐもぐ、おいしゅうございますわ。もぐもぐ、おいしゅうございますわ。もぐもぐ・・・おえっ・・・なんじゃこりゃ~っ!」ってなことになりかねないのである。
ところで、サテ・カンビンはテーブルに運ばれてきた時点では基本的にはピーナツソースとケチャップ・マニスが絡めてあるだけの至ってシンプルな味付けである。勿論、バワン・メラこそ混ぜてはあるものの、これは肉の臭みを消す薬味のような控えめな存在である。焼き鳥に七味唐辛子が必要であるように、当然サテ・カンビンにはサンバルの辛味が必要である。とは言っても、テーブルに置かれた調味料入れから唐辛子のつぶつぶも生々しいサンバルをいきなり目分量でサテ・カンビンの上にまぶすのはあまりいただけない。なぜなら、サテ・カンビン屋のサンバルはスーパーで売られているような万人受けする画一化された程よい辛味のものではなく、それこそ舌の先が痺れる程の強烈な辛味を持った破壊力のあるものが多いからである。やはり、皿の端に控えめな量を取り、様子を見ながらピーナッツ・ソースとケチャップ・マニスの混じったどろどろのタレに少量づつ絡めつつ食することが最善の策であろう。
そしてグレ・カンビン、こいつを食するにもちょっとした覚悟が必要だ。前述の通り、グレ・カンビンには山羊の様々な部位が具として入っている。どこまで食べていいのか判断に苦しむような少量の肉がへばりついた骨、いつまで経っても歯にジャストミートしない軟骨、真面目に咀嚼することが空しくなってくる腸などのいわゆる「ホルモン類」などはまだまだかわいい方で、ぺろぺろした網状の臓物、生々しい血管が絡みついたままの臓物など、スプラッター映画ファンが喜びそうなインパクトのあるビジュアルのものがカレー色に濁ったスープの中から現れ、ぎょっとさせられることもしばしばである。
また、これらの強敵をクリアーした後に、グレ・カンビンをスープとして味わう際にも注意が必要だ。同じ汁物であるソト・アヤムに、レモン(ジュルック・ニュピス)とサンバル、ケチャップ・マニスで程よく味付けし、ナシ・プティをぶち込んでお茶漬けのようにわさわさとかき込むとこのうえなく美味であることは何回かバリに行ったことのある人なら周知の事実の筈であるが、グレ・カンビンにはその経験値は全く役に立たない。なにせ豪快に様々な部位をぶった切りにして入れているものだから、小さな骨片のガリガリ、血が沈殿してして固まったと思しきメロメロ、あまり食したくないような内蔵の破片と思しきベロベロなどが混入しているのが当たり前なのである。勿論、揚げた玉葱のちりばめられたナシ・プティと、程よい辛さのグレ・カンビンの相性が抜群であることは間違いないのだが、グレ・カンビンの器に豪快にナシ・プティをぶち込むのは避けなければならない。やはりここはまどろっこしくともスプーンでスープをすくい、ナシ・プティにかけて食すべきであろう。少なくとも自分はグレ・カンビンの最後の一滴まで飲み干すようなことはしない。
し・か・し、だ!旨いんだよな、これが。
やべぇ。酔いに任せてバカなこと書いていたら本気で喰いたくなってきた・・・
それは、パダン料理、バビ・グリン、そして、サテ・カンビン!
サテ・カンビンは、山羊のサテ(串焼き)であり、少なくともバリでは専門の店で食べるのが普通。と、言うより、専門の店以外では提供されてるのを見たためしがない。
サテ・カンビンは一般には「精力がつく食べ物」とされている。また、ビールとの「食べ合わせ」が悪いとも言われており、「サテ・カンビンを食べてビールを飲むと精力がつきすぎて眠れなくなる」などとも言われているようだ。たしかにアルコール類を置いてあるサテ・カンビン屋には出くわしたことはないが、そもそもサテ・カンビンはムスリムの食べものであるので、これは当然だし、ブンクス(持ち帰り)したサテ・カンビンをビールを飲みながら食したことも何度となくあるが、少なくとも俺は体調に異変を感じたことは一度もない。
それはさておき、サテ・カンビン屋に行くと、黙っていてもナシ・プティ(ご飯)、グレ・カンビン(山羊の様々な部位が入ったスープ)、そして勿論サテ・カンビン(山羊肉の串焼き)が出てくる。なぜなら、これしか供するものがないからだ。この為、サテ・カンビン屋での従業員との会話は極端に少ない。せいぜい、「アパ・ミヌム?(何を飲む?)」と訊かれる程度だ。俺の場合、サテ・カンビン屋に行くとどんなに多くとも4回しか話さない。内訳は、
「テ・ボトル(瓶詰めゲロ甘紅茶)くれ」
「扇風機回してくれ。暑くていけねぇ」
「バワン・メラ(赤玉葱。ま、薬味である)をたっぷり入れてくれ」
「はいよ、これでお勘定」
これだけである。
さて、入店後、しばし待つことうやうやしく運ばれてきたサテ・カンビン。こいつを食するにはちょっとした流儀がある。「なぁに、俺達は焼き鳥を食いなれているからな」などと侮ってはいけない。たしかに、我々日本人にとって焼き鳥は馴染み深い串焼き料理ではあるが、サテ・カンビンは常識的に日本で供されている焼き鳥と比較し、肉の一片があまりにも小さいのだ。それこそ小指の先くらいしかないのが普通であり、初めてサテ・カンビンを食する日本人は例外なく困惑する。やはりここは串を横に構え、根元の肉片から串に刺さった複数の肉片を一気にむしりとり一口で食するのが王道であり、一番美味しい食し方である。
この食べ方が一番美味しいという理由には「肉の一片が小さいから食べ応えがないし」とか、「やっぱ精力のつく料理はワイルドにいかなきゃな」等と言うような単純な、もしくは妙な思いいれでは片付けることの出来ない確固たる根拠がある。実は、串に行列をなした肉の最後尾、即ち串の根元に最も近い部分に腎臓や肝臓類の臓物類、即ち筋肉とは異なるゲテモノ素材が待ち受けていることも多いのだ。正直言って、これらのモツは単独で食べると臭い。このため、旨み成分の多い筋肉類と同時に食することが望まれるのである。お上品に少しづつ食べていると、「もぐもぐ、おいしゅうございますわ。もぐもぐ、おいしゅうございますわ。もぐもぐ・・・おえっ・・・なんじゃこりゃ~っ!」ってなことになりかねないのである。
ところで、サテ・カンビンはテーブルに運ばれてきた時点では基本的にはピーナツソースとケチャップ・マニスが絡めてあるだけの至ってシンプルな味付けである。勿論、バワン・メラこそ混ぜてはあるものの、これは肉の臭みを消す薬味のような控えめな存在である。焼き鳥に七味唐辛子が必要であるように、当然サテ・カンビンにはサンバルの辛味が必要である。とは言っても、テーブルに置かれた調味料入れから唐辛子のつぶつぶも生々しいサンバルをいきなり目分量でサテ・カンビンの上にまぶすのはあまりいただけない。なぜなら、サテ・カンビン屋のサンバルはスーパーで売られているような万人受けする画一化された程よい辛味のものではなく、それこそ舌の先が痺れる程の強烈な辛味を持った破壊力のあるものが多いからである。やはり、皿の端に控えめな量を取り、様子を見ながらピーナッツ・ソースとケチャップ・マニスの混じったどろどろのタレに少量づつ絡めつつ食することが最善の策であろう。
そしてグレ・カンビン、こいつを食するにもちょっとした覚悟が必要だ。前述の通り、グレ・カンビンには山羊の様々な部位が具として入っている。どこまで食べていいのか判断に苦しむような少量の肉がへばりついた骨、いつまで経っても歯にジャストミートしない軟骨、真面目に咀嚼することが空しくなってくる腸などのいわゆる「ホルモン類」などはまだまだかわいい方で、ぺろぺろした網状の臓物、生々しい血管が絡みついたままの臓物など、スプラッター映画ファンが喜びそうなインパクトのあるビジュアルのものがカレー色に濁ったスープの中から現れ、ぎょっとさせられることもしばしばである。
また、これらの強敵をクリアーした後に、グレ・カンビンをスープとして味わう際にも注意が必要だ。同じ汁物であるソト・アヤムに、レモン(ジュルック・ニュピス)とサンバル、ケチャップ・マニスで程よく味付けし、ナシ・プティをぶち込んでお茶漬けのようにわさわさとかき込むとこのうえなく美味であることは何回かバリに行ったことのある人なら周知の事実の筈であるが、グレ・カンビンにはその経験値は全く役に立たない。なにせ豪快に様々な部位をぶった切りにして入れているものだから、小さな骨片のガリガリ、血が沈殿してして固まったと思しきメロメロ、あまり食したくないような内蔵の破片と思しきベロベロなどが混入しているのが当たり前なのである。勿論、揚げた玉葱のちりばめられたナシ・プティと、程よい辛さのグレ・カンビンの相性が抜群であることは間違いないのだが、グレ・カンビンの器に豪快にナシ・プティをぶち込むのは避けなければならない。やはりここはまどろっこしくともスプーンでスープをすくい、ナシ・プティにかけて食すべきであろう。少なくとも自分はグレ・カンビンの最後の一滴まで飲み干すようなことはしない。
し・か・し、だ!旨いんだよな、これが。
やべぇ。酔いに任せてバカなこと書いていたら本気で喰いたくなってきた・・・
by rosinambu
| 2006-05-18 02:02
| バリ
|
Comments(6)
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tidakapa-apa at 2006-05-18 08:54
nambuさん、おはようごじゃります〜☆
朝から大笑いしながら読ませて頂きました!!
nambu節炸裂ですね(笑)
カンピン・・特にグレ カンピンに興味大でしたが このライナー読んでたら内蔵系が苦手な私にはムリ!?って感じかも(汗)
“こてっちゃん”ですら最近やっとツツけるようになったばかりだし・・・
とりあえず次の課題はパダン料理ですかねぇ〜。
朝から大笑いしながら読ませて頂きました!!
nambu節炸裂ですね(笑)
カンピン・・特にグレ カンピンに興味大でしたが このライナー読んでたら内蔵系が苦手な私にはムリ!?って感じかも(汗)
“こてっちゃん”ですら最近やっとツツけるようになったばかりだし・・・
とりあえず次の課題はパダン料理ですかねぇ〜。
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ごまにゃん
at 2006-05-20 23:13
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はじめまして、nambuさん。
私も一人でバリに行った時には、プリアタンのカンビン屋でこの3点セットを食べます。
とってもおいしいですよねぇ。
でも、主人とバリに行くと嫌がるので食べられないんです。
あ~、私も食べたくなってきました。
私も一人でバリに行った時には、プリアタンのカンビン屋でこの3点セットを食べます。
とってもおいしいですよねぇ。
でも、主人とバリに行くと嫌がるので食べられないんです。
あ~、私も食べたくなってきました。
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rosinambu at 2006-05-21 08:54
こぱうだーさん(tidakapa-apaさん)、こんにちは。
ちょっと酔っ払っていて悪乗りしてしまいました。^^;
そうか、モツが苦手だったんでしたっけ・・・まぁ、ものはためしですから、次回挑戦してみてはいかがですか?
ちょっと酔っ払っていて悪乗りしてしまいました。^^;
そうか、モツが苦手だったんでしたっけ・・・まぁ、ものはためしですから、次回挑戦してみてはいかがですか?
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rosinambu at 2006-05-21 09:03
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ごまにゃん
at 2006-05-24 23:34
x
こんばんは、nambuさん。
主人がカンビン屋に行かない理由。それは、
「何が入っているか分からない物を食べるなんて、考えられない」
だそうです。食わず嫌いだと思いません?
あ、それからお店が一緒かもって思ってました。テーブルクロスの柄が、
私の行く店と同じだったもんで・・・。なんだか同士を発見したみたいで、
ちょっと(いや、かなり)嬉しかったです。
主人がカンビン屋に行かない理由。それは、
「何が入っているか分からない物を食べるなんて、考えられない」
だそうです。食わず嫌いだと思いません?
あ、それからお店が一緒かもって思ってました。テーブルクロスの柄が、
私の行く店と同じだったもんで・・・。なんだか同士を発見したみたいで、
ちょっと(いや、かなり)嬉しかったです。
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rosinambu at 2006-05-26 23:56
ごまにゃんさん、再訪ありがとうございます。
う~ん、ご主人のお気持ち、わからないでもありません。本文でも記したように、たしかにぎょっとするようなものが入ってますしねぇ・・・
でも、まあ一回は食べてみるといいかと思います。ほとんどローカルな人しか来ないし、観光客向けレストランでは味わえないような雰囲気がありますしね。
う~ん、ご主人のお気持ち、わからないでもありません。本文でも記したように、たしかにぎょっとするようなものが入ってますしねぇ・・・
でも、まあ一回は食べてみるといいかと思います。ほとんどローカルな人しか来ないし、観光客向けレストランでは味わえないような雰囲気がありますしね。