2009年 08月 11日
そしてトゥンバン・ギランは… |
さて、アンドンでトゥンバン・ギランのガンサを見た翌日、定宿であるデワ・バンガローの次男坊にこの話をしたところ、「欲しい!是非欲しい!」と言い出した。
実は彼は有能なプナブ(ミュージシャン)であると同時に楽器屋も営み、それとは別に『度を越えた』ガムラン・コレクターでもある。彼の手元には、「売る気はない」というガムランのセットが、俺が把握しているだけでゴン・クビャールが2セット、プレゴンガン(スマル・プグリンガン・サイ・リマ)が1セット、スマル・プグリンガン・サイ・ピトゥが2セットある。
特に、2セットあるスマル・プグリンガン・サイ・ピトゥのうちの1セットの枠に施されている彫刻の出来は、いまだかつて無い程に見事なものである。製作中にその細密さが話題となり、多くのガムラン関係者が見学に訪れたほどである。
俺もその製作過程を見ていたが、あまりに細密さに、「これ、本当に完成する日が来るんだろうか?」と疑ったものである。案の定、完成に数年かかったが、残念なことにこの楽器群は特別な部屋に保管されており、彼が営む楽器屋、及び工房を訪れても観る事は出来ない。が、撮影をしない、という前提でお願いすれば見せてくれる(かもしれない)。
驚くぜぇ。
それはともかく、だ。
次男坊が「チョ・アリさんのところにトゥンバン・ギランがあるのか?欲しい!」と言い出した数日後、何の用事だったか忘れたが、アンドン・ステージ(ヤマサリの定期公演会場)を訪れ、チョ・アリ氏と話をしていると、突然、定宿の次男坊が長男を引き連れて現れた。満面の笑みで迎えるチョ・アリ氏。実は、チョ・アリ氏は俺の定宿のあるパダン・テガルの青年団の楽団の指導もしていたということもあり、定宿の次男坊とは少なからぬ縁があるのである。
しばらくの雑談の後、(重要な話をする時に、いきなり本題を切り出さないのはバリでも日本でも同じである)兄弟は「トゥンバン・ギランを譲って欲しい」と切り出した。おいおいおいおいおい、ちょっと待てよ。
しかし、チョ・アリ氏は動じる気配も無く、笑顔で応じている。意外にもごく簡素なやりとりで話はまとまってしまったようだ。定宿の兄弟は、「じゃ、あとでな」と言い、その場を立ち去った。
せっかく探して手に入れたトゥンバン・ギランを…
彼らが帰った後、チョ・アリ氏と話をした。
「あの楽器、譲っちゃったんですか?」
「ああ。ワシが買った値段で売ってやった」
「え?チョアリさんの儲けはなしですか?ブレレンまで捜しに行ったのに?」
「奴とはお互い、芸術家同士だからな。奴が欲しいというなら譲ってやるわい」
「そうですか…勿体ないことをしましたね。俺が余計なこと言っちゃったせいかな…すいません…」
「ま、しゃぁない」
「じゃ、トゥンバン・ギランの楽団結成は中止…ですか?」
「んなわけないだろ!また楽器を探しに行ってくるわい!」
やっぱりやるのか…
その数日後、定宿の工房の一画に1セットのトゥンバン・ギランが運び込まれた。
頼むから、コレクションにしないでちゃんと使ってくれよ~
実は彼は有能なプナブ(ミュージシャン)であると同時に楽器屋も営み、それとは別に『度を越えた』ガムラン・コレクターでもある。彼の手元には、「売る気はない」というガムランのセットが、俺が把握しているだけでゴン・クビャールが2セット、プレゴンガン(スマル・プグリンガン・サイ・リマ)が1セット、スマル・プグリンガン・サイ・ピトゥが2セットある。
特に、2セットあるスマル・プグリンガン・サイ・ピトゥのうちの1セットの枠に施されている彫刻の出来は、いまだかつて無い程に見事なものである。製作中にその細密さが話題となり、多くのガムラン関係者が見学に訪れたほどである。
俺もその製作過程を見ていたが、あまりに細密さに、「これ、本当に完成する日が来るんだろうか?」と疑ったものである。案の定、完成に数年かかったが、残念なことにこの楽器群は特別な部屋に保管されており、彼が営む楽器屋、及び工房を訪れても観る事は出来ない。が、撮影をしない、という前提でお願いすれば見せてくれる(かもしれない)。
驚くぜぇ。
それはともかく、だ。
次男坊が「チョ・アリさんのところにトゥンバン・ギランがあるのか?欲しい!」と言い出した数日後、何の用事だったか忘れたが、アンドン・ステージ(ヤマサリの定期公演会場)を訪れ、チョ・アリ氏と話をしていると、突然、定宿の次男坊が長男を引き連れて現れた。満面の笑みで迎えるチョ・アリ氏。実は、チョ・アリ氏は俺の定宿のあるパダン・テガルの青年団の楽団の指導もしていたということもあり、定宿の次男坊とは少なからぬ縁があるのである。
しばらくの雑談の後、(重要な話をする時に、いきなり本題を切り出さないのはバリでも日本でも同じである)兄弟は「トゥンバン・ギランを譲って欲しい」と切り出した。おいおいおいおいおい、ちょっと待てよ。
しかし、チョ・アリ氏は動じる気配も無く、笑顔で応じている。意外にもごく簡素なやりとりで話はまとまってしまったようだ。定宿の兄弟は、「じゃ、あとでな」と言い、その場を立ち去った。
せっかく探して手に入れたトゥンバン・ギランを…
彼らが帰った後、チョ・アリ氏と話をした。
「あの楽器、譲っちゃったんですか?」
「ああ。ワシが買った値段で売ってやった」
「え?チョアリさんの儲けはなしですか?ブレレンまで捜しに行ったのに?」
「奴とはお互い、芸術家同士だからな。奴が欲しいというなら譲ってやるわい」
「そうですか…勿体ないことをしましたね。俺が余計なこと言っちゃったせいかな…すいません…」
「ま、しゃぁない」
「じゃ、トゥンバン・ギランの楽団結成は中止…ですか?」
「んなわけないだろ!また楽器を探しに行ってくるわい!」
やっぱりやるのか…
その数日後、定宿の工房の一画に1セットのトゥンバン・ギランが運び込まれた。
頼むから、コレクションにしないでちゃんと使ってくれよ~
by rosinambu
| 2009-08-11 08:32
| バリ
|
Comments(4)
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tidakapa-apa at 2009-08-11 09:30
あのすごい彫刻の作品はコレクションの為に作ったんですか★
撮影はダメだったけど脳裏にしっかり残っております!
あんなすごいの定期公演でも見たことないです・・・もったいない
撮影はダメだったけど脳裏にしっかり残っております!
あんなすごいの定期公演でも見たことないです・・・もったいない
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seniman
at 2009-08-11 09:43
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rosinambu at 2009-08-11 10:00
tidakapa-apaさん、こんにちは。
あのサイ・ピトゥのセット、使いたい気持ちはあるようなんですが、運搬中に破損するのが怖くて持ち出せないそうです。デワいわく、「専門の運搬職人を雇って、一台ずつ毛布に包んで運ぶつもり」と、言ってました。
実際、そのくらいしなきゃあの繊細な彫刻は破損しますよね。
あのサイ・ピトゥのセット、使いたい気持ちはあるようなんですが、運搬中に破損するのが怖くて持ち出せないそうです。デワいわく、「専門の運搬職人を雇って、一台ずつ毛布に包んで運ぶつもり」と、言ってました。
実際、そのくらいしなきゃあの繊細な彫刻は破損しますよね。
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rosinambu at 2009-08-11 10:03
seniman さん、こんにちは。
トゥンバン・ギランの録音、テープでは発売されているそうです。が、残念ながら私は見つけることが出来ませんでした。
あ、チョ・アリ氏は、「新作も創るつもり」、とも言ってました。
トゥンバン・ギランの録音、テープでは発売されているそうです。が、残念ながら私は見つけることが出来ませんでした。
あ、チョ・アリ氏は、「新作も創るつもり」、とも言ってました。